ぴ〜教授のショートサスペンス  あなたはこのfinalに耐えられるか!

 
  女優-1('02/10/26)  女優-7('02/12/15)    究極玩具-4('03/2/16)

 
 女優-2('02/10/30)  女優-8('02/12/16)    究極玩具-5('03/2/22) 

 
 女優-3('02/11/3)   4人の男('03/1/22)    究極玩具-6('03/2/28)

 
 女優-4('02/11/10)  究極玩具-1('03/1/27)

 
 女優-5('02/11/16)  究極玩具-2('03/1/30)

 
 女優-6('02/11/26)  究極玩具-3('03/2/1)
   


 女優-6

4人の男達がテーブルにすわっている。おやじ風の4人。酒を酌み交わしながら、
なにやら小声でささやいている。
「ほら、来たぜ!あれがきっとそうだ。あいつに、ちがいない。」
「顔を覚えておけ」
また、沈黙がつづいた。”あいつ”と呼ばれた男がでていったあと、この4人もテーブルを立った。

あたりが、よく見えない。どのような状態なのか、
ぴ〜教授はまだ理解できていなかった。
やがて、
”101010”の羅列群しか、見えていなかった状況が、ビジュアル的に脳に伝わってきた。
やがて、それは普段の自分が存在していた現実世界のように。

どこかのサイトに来たのか。一本道が続いている、まっすぐ歩くしかしかたがない。
人影らしものが見えてきた。どうやら子供達が遊んでいるようである。
「ぼうやたち、ここら辺りに、きれいな御方が住んでいるところを、知らぬか」頭では、普通
の事を考えているのに、なぜか昔の言葉がでてくる。いったい、どうなってるんだ。
「知ってるよ。あっちの方」っと子供が指差す。

指差す方向には、森らしきものが見える。「あそこだな」っと思い、更に歩く。一人の老人が
大木の切り株に座っていた。「旅の御方、どちらへ参られる」

「ご婦人を捜しています。」「小町殿かな」
「そうです。こちらですか」
「この道をまっすぐ行くとよい。そうしたら大きな門が見えるから、その中に入りなされ。
ただし、入れたらの話だが」
「どういう意味ですか」

「旅のお方、この村は
竜神村と申す。代々、1200年小町殿を外敵から守ってきた。
もちろん、
小町殿がおられる御堂は、結界がはられ特別なものだけが、中へはいれるように
なっておる。この村でも、2,3の許されたものだけじゃ。それは、中と外との連絡、食べ物の
搬入などの役目をになっておるがの。ほれ、あそこで遊んでいる子供の手の甲をみなされ。」

ぴ〜教授は言われた方に入る子供をみた。子供の甲には、竜のあざがあった。
「見られたかの、
竜のあざがあったであろう。あれが、許されたものなのじゃ。
最近、やたらと見知らぬものがはいってくる。そして、みんな死んでいった。
御主も、そうならぬようにな」
ぴ〜教授は身震いをした。「そんなあ、こんなところで死んでどうなる」

先ほどの子供が手に、柿やらみかんやらを持って、御堂に入っていった。その後に続かんとばかり
誰かが木陰から飛び出した。なにが起こったのか、電気がショートしたような火柱があがり、そのものは
宙をとんだ。そして消えた。

「わかったかの。そういうことじゃ」っと言って老人は笑った。老人の額にも皺で深くはなっているが
竜のあざがあった。どうすべきか、ぴ〜教授は迷った。でも、俺は行くしかない。行かないと帰れない。

すばらしい、門構えのお寺が目の前に現れた。
”随心院”と書いてある。中にはいれるか、心でまだ迷っている。
手をそっとさしのべた。す〜と、すべるように入った。入れたのだ。
後ろを振り返った。老人が笑っていた。「とうとうこられたか、待ったものよのう」これで、我々のお役目も終ったな。

誰やらがでてきた。女らしい。女がしゃべった。「あなた様は!深草の少将様!」
少将?
ぴ〜教授はよくわからなかった。どうやら少将になっているらしい。ふと、自分を見ると
平安朝の衣装に変わっている。
「あなたは?」「私は、小町様にお仕えする侍女の
”緒女”です。」

「あなたさまは、病気でお亡くなりになったと、聞いておりましたが。」
ぴ〜教授は一瞬ためらい、
「私は少将ではありません。少将の縁つづきのものです。
小町殿に状況を知らせに参った。小町殿はご在宅か」
小町殿はおられますが、しかし、あなたさまは、ほんとに少将殿にうりふたつな。少将殿が亡くなったと、噂が流れてからも、
小町殿は、それを信じず、いまでも100回目の訪問を御待ちになっておられました。あれから、1200年。
それはもう長い年月をお待ちなされております。」

「私が、深草の少将となり、お会いさせてくだされ。」
緒女はそのまま深草の少将と見間違うぴ〜教授を中へいざなった。

まだ、合えぬ、確か「歌」を読まねば、
「長月の 想いいだきて 異界より 現われし我 君を助けん」
”なんかもひとつやなあ、でもこれでいいか。”と想いながら、文を書き、
緒女に渡した。
緒女はそれをもって、小町のいる部屋へ。

「是は、少将殿の!やはり、生きておられたのか。うれしや。」とうとう
100回目の約束が果たされたのである。
少将となった
ぴ〜教授は中へ通された。「少将殿!」小町は震えていた。老いさらばえた自分を見せたくないのか。
顔を隠していた。少将はやさしく手をとり、くちづけをした。どうしたことか、
小町の体はみるみるうちに若返り
99回目まで文をかわした、あのころの
小町に戻った。少将は、そしてやさしく小町の顔を上げた。

ぴ〜教授は驚いた。こんなにも美しいとは、絶世の美女とはこういうのであろう。もうここで、俺は暮らしてもいいと
さえ思った。
小町の夢はかなった。小町が語り始めた。

「あなた様が、本当の少将様でないことは、わかっております。あの歌をみればね。しかしながら、私はそれで十分なのです
100回目の念誦を誰かが私に解きに来ない限り、のちのちの世に災いをのこす、封印が解かれないのです。
それが、あなた様でした。それでは、いきましょう。あなたの世界の
”随心院”ですね。私が、そこに現れることで
それは解かれ、姿を現します。」

これで、良かったのか、
マスター。よくよく考えれば、帰る方法を聞いていなかったぴ〜教授である。小町について行くしか
戻るすべはない。その方が、
ぴ〜教授にとってはよかった。マスターといたあの部屋は、あれから数分後になくなって
いたのだから。電子経路で戻っていたら、今頃実体化できず死滅していたであろう。(…つづく)