ぴ〜教授のショートサスペンス あなたはこのfinalに耐えられるか!
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■ 女優-1
毎日、決まった時間に起き、朝ご飯を食べ、決まった時間に出ていく。いつもの道を通り、いつもの駅から
いつもの電車にいつもの車両からのり込む。決まりきったおじさん、OL達に会い、いつも通りに、駅に着き
なんの問題もなく、大学へ。いつもの気の抜けた学生に授業をし、そして、いつも通り定刻に帰って来るの
である。こんな生活を20年続けているぴ〜教授である。なんの不満もない、家庭も円満ごく普通の人なの
である。ある時、TVでこんな番組をやっていた。
ごく平凡なサラリーマンが違う道を工事のため回り道をして、家に帰ってきたところ、全ては同じ環境なのに
知っている人がみんな、そのサラリーマンを知らない。別世界に迷いこんでしまい、一種の安らぎを得るという
不思議なストーリーだ。
「そんなバカな!」あり得ない。ぴ〜教授は呟いた。
明朝、ぴ〜教授のいつもの生活リズムがはじまった。帰り、ふと昨日のTVを思い出した。そうか、1度違う道を
帰るかあ!別に遠回りでもないし。こうして歩いてみると、ちょっと違うだけでいろいろと新鮮に映るものである。
こんなところにコンビニがあったんか、おやサウナも。ここ回ってみるか。ぴ〜教授はだんだんと楽しくなってきた。
家まで15分のところもう30分は歩いている。おや、あんなところに占いが、見ればまだ若い婦人である。
ぴ〜教授は別に占いに興味はなく、チラッと一瞥して、占い師のいる角を回った。一瞬、目が合ったと思ったが
気にすることもなく、進んだ。ここを行けば、家まで10分で戻れるはずだ。
5分後、工事中、行き止まりの看板。えぇ!そんなあ。おまけに雨が降り出してきた。傘をもっていなかったぴ〜教授
は、小走りに今来た道を引き返した。雨はだんだんと激しくなってきた。ぴ〜教授はしかたなしに、途中見かけた
ショットバーらしき店に飛びこんだ。店の名前をチラッと見た。くもの巣。
だんだんと目が慣れてきた。そこは、なんかノスタルジーを感じる大正ロマン的な店であった。初老のマスター
と店には3,4人のサラリーマン風のおやじ達がいた。
「いらっしゃ。お客さんはじめてですね」
「えぇ、雨が降ってきたんでちょっと、雨宿りのつもりで」
「雨、ですか。まあ、私にはラッキーな雨ですね。お客さんを呼んでくれて」
妙に、落ちついた。マスターの声の響きである。
ドライマティーニ!ください。一口飲んで、もう一度ゆっくりと店内を見た。おやじが4人と奥に女性が一人
いたのか。「マスター!あそこの奥のカウンターにいる女性!すごくきれですね。常連さん?」
「彼女ですか。彼女、女優さんですよ。」
「へぇ〜。こんな店に(失礼!)に来るんだ」
ぴ〜教授は興味を示し、彼女に近づいて行った。手には”ブラディマリー”を持って。(…つづく)