エピソードC社シリーズ3
"F氏との交遊録
その3"
『"あぶない夏の海"』の巻
ある真夏の日曜日の朝早くF氏から電話がかかってきた。
『今日はこれから君と海水浴に行く。君には拒否する権利はない。
今日はどうしても海へ行かねばならない。
なぜなら、今日海へ行くと、とてもいいことがあると神のお告げがあったからである。
』
ちなみにその日はどんよりした曇りがちの天気であった。急な話なので、
手近な海水浴場がいいということになり、F氏とナンバで待ち合わせ、
南海電車にて、和歌山の磯の浦(いそのうら)≠ヨ行った。
泳ぐのが目的ではないので、2人砂浜で寝そべっていた。
少し離れてとなりに、かわいい女の子ばかりの3人組がいた。3人並んで、ビーチシート
の上に寝そべり、こんがりと体を焼こうというところだろう。
しばらくして彼女たちが、こちらをちらちら見て、何かヒソヒソ話し合っている。
それに気がついた予言者のF氏は私にこう言った。
『彼女たちはオレに気があるようだ。確かにこれだけカッコイイ男を世間の女が
ほっておくはずがない。
しかし、それにしても最近の女どもはなかなか大胆なものだ。
女の方からナンパしてくるとはな。』
すると、3人組のうち、ひときわナイスバディのかわいい女の子がこちらにやってきた。
そして、ニコッとわらいながらF氏に向かってこう言った。
『おじさん、すみません、3人共ちょっとの間いなくなるので、この場所見といてもらえません?』
F氏は、興奮のあまり裏返った声で、即座にこう答えた。『はい、いいですよ、どうぞ。』
昼過ぎになると、さらに曇ってきて、暗くなり、寒いほどであった。そこで、砂を掘って
体を砂で埋めてはどうかということになった。F氏と私は思い切り深く砂を掘り、
いっぱいに体を沈めて、肩から足までを砂で埋め尽くした。
F氏
『これであったかくなったな。どうや。』
私 『そうですね。サウナみたいですね。』
砂の中より首から上だけが出ている状態で、2人にとんでもない危険が近づいているとは
思いもよらなかった。突然、ドリフかひょうきん族のコメディみたいなことが起こった。
バケツをひっくり返したようなドシャブリの雨が降ってきたのである。
F氏と私は、まさに身動きできない状態で、おぼれ死にしそうになった。
いっいっいっ息ができない!!!
私はテレビニュースで、アナウンサーが『本日、和歌山県磯の浦海岸の砂浜において、
砂に埋まって溺死している2人の男性の遺体が発見されました。』と述べている場面を思い浮かべた。
すぐに海岸の警備員がかけつけてくれたため、2人は一命をとりとめることができたのだった。
この後、F氏と私はナンバに帰ってから、いつものように『反省会』という名の宴会
をやったことは言うまでもない。2人共、今も生きているということは、F氏の予言が
まんざら嘘でもなかったという証拠かもしれない。
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