エピソードC社シリーズ2
"F氏との交遊録
その2"
『"顔色の悪いツレ"』の巻
十数年前F氏はよく独身の私のアパートを訪問した。訪問時間帯はおおむね
午前2時〜午前3時である。
F氏は気をつかうたちなので、必ず《手みやげ》を持参する。最多登場《手みやげ》は
駆け込み乗車は危険ですの看板であった。その他思想的にかなりあぶないものまで
多数の《手みやげ》が私の部屋の隅に山と積まれた。
ある日の午前3時頃、F氏はいつものように、すっかりできあがった状態で、やってきた。
そしてこう言った。
『きょうはつれがいる。つれは酔っ払って気分が悪く、顔色が真っ青なので、
しばらく外の空気を吸って、酔いをさますらしい。
君、悪いが外へ行って、つれを介抱してやってくれないか。』
私は非常にいやな予感がしたが、とにかく外に出てみた。
確かにつれはいた。
しかし、顔色は真っ青どころではない。
ま緑であった。
つれとは薬局の外によく置いてある身長1mのコルゲンカエルさんであった。
私はこのまま放置しておくと犯罪になると思ったので、F氏に薬局の場所を聞き出し、
大きなゴミ袋に包んで、背中にしょって、カエルさんを元の場所に返しに行った。
午前4時頃で暗かったのと、住宅街で人気(ひとけ)が少なかったので、誰にも会わずに済んだ。
酔っ払っていたF氏がこれをどうやって運んできたのかいまだに謎である。
翌朝F氏に、もう《手みやげ》はいらないと頼んだが、後から考えるとこの程度の事件は
まだ序の口≠ナあった。
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