エピソード35 おかしな兄弟 (02/7/18)

ここにおかしな兄弟がいます。『おかしい』という表現がいいのか、『奇妙な』と言っていいのか
『変わった』と言ったほうがいいのか、迷うところですが。

私は2人のうちの兄貴の方を知っていて、弟の方は知らないのですが、兄貴は某大手の
外資系企業に勤めるサラリーマン。風貌もわりとかわいい部類にはいる、母性本能をくすぐらせる
キャラの持ち主です。年は30を越えたところ、独身です。身長は1m60cmぐらいでしょうか。
一流の大学を卒業しています。
大学時代は ESSクラブに所属し、ばりばりに英語をしゃべっていたようです。
卒業後、大手に就職し中国へ飛ばされ、何をどのように生きてきたのかは知りませんが、
とにかく中国語だけはしゃべれるように、なったようです。
そして、帰国後、転職をし今の外資系の会社にいるのですが、ここでは英語をしゃべれない
ということでひた隠しにしておりました。ふとした事でこれが上司にバレ、やっかいなことに
なりかかっています。また、ついでにこの時、かわいい女子高生の家庭教師を休みの日に
していることもばれました。(これは内緒にしてやってください)。なんでも歴史の真実を探求する
ことが非常に好きで、趣味も兼ね社会の家庭教師をしているようなんです。こんな兄貴がここ
にいます。こんな兄貴が出入りするようになって、彼が自分の弟のことを教えてくれるチャンス
が湧き起こってきたんです。

兄貴:私、実は弟がいるんですよ。今学生なんですけどね
私  へぇ、だいぶ年が離れてるんやね
兄貴:いえいえ、私より2歳年下なんですよ。医者のインターンしてるんです。
    大学は最初慶応の医学部に行ってて、性に合わないからって、東大に行きましてね、
    そして今京都の某医大にいって、医者の勉強してるんです。

私  へぇ、勉強好きやね。当然独身やわな。
兄貴:もちろん独身ですよ。去年の夏、弟と2人で奄美大島に行ってきたんですよ。
    一応私がお金をだしてね。奄美大島はおねえちゃんも素朴でいいですよね。
    娯楽がないから、みんな夜遅くまでコンビニを取巻いて遊ぶんですよね。
    僕も一応地元の若者の中にいれてもらって、こう見えても遊んだんですよ。

私 へぇ、弟は何してたん?
兄貴:弟は、仕事してました。
私 医者の?
兄貴:弟は、クワガタを採りに山へ入ってたんですよ。弟は実はクワガタ業界ではちっとは
    有名らしんですよね。日本全国北海道から沖縄までの全部のクワガタをもってるんです。
    今回はその筋の人から
『1週間で10匹集めてくれ』ちゅうことで、来てるんですよ。
    弟、結構有名で、ようそんな依頼きますね。1件20万ぐらいで引き受けてるんと
    違うかな。今回は有る意味そのお伴ということで。
私 へぇ、ちょっとやばいなそれ。その筋もかんでるとなると。
兄貴:実は奄美大島ではクワガタの乱獲があって大量あるいは貴重な種類の持ち出しを
   厳しくチェックしてるんです。弟も何回も来てるもんやから、顔割れてましてね、要注意人物
   で手配されてます。私がカモフラージュでついて来てるようなもんです。

私 で、今回の仕事は?うまくいった?
兄貴:今回は少なかったんでまあいいわ!ってな感じで通してもらいましたね。弟、空港の人
    とも仲良しになってるみたいです。

私 まさか家で飼育してるんとちがうよな。ようそんなおかしなやつがおるんや。
  暗〜い部屋で、不気味にニヤニヤしながら飼ってるやつな。

兄貴:もちろん、してますよ。自分の部屋で。すごいですよ。住んでる土地に合う土からブレンドするんですよ
    北海道はこの土、長野はこの土って。もちろん餌はいろんな種類があります。
    いつも、弟がこれはどこそこの○○○○っていうめずらしいやつや。なんていって教えに
    くるので何匹は覚えますね、さすがに。

私 飼育したやつ、どうするん?売るの?
兄貴:それが売らないんですよ。ただ飼ってるだけ。何年も生かすんですよ。もちろん貴重な
    クワガタは標本にして残してます。標本にするときは弱ってきたやつを生きてるあいだに、
    薬殺して作るんですけどこれがまた、くさくてねぇ。
    このあいだなんか、私の部屋に何体か標本を作成するのに使かわれて薬で充満したんです。
    めまいがしましたね。その時、おやじが入ってきて、○影、○影(兄貴)を殺す気か!って怒鳴っ
    てましたね。

私 ○影?仮面の忍者赤影みたいやな。影一族か?
兄貴:そうなんですよ。うちみんな『○影』って名前なんです。古い京都の家庭でね。
私 そんなに有名なら、昆虫学会なんかにも呼ばれるの?
兄貴:それが、そういう世界には手を出したくないそうなんです。ワープロも打てない機械音痴なんで
    ホームページなんて世界も縁がないしね。私、こいつ医者になっても絶対に診てほしくありませ
    んね。

私 わかった!その薬、手にいれるのに医者になろうとしてるんじゃないのか?
兄貴:そうかもわかりません。なんせ変わったやつですから。私ら二人は昔から神童として
    注目されてましたからね!

私は唖然とするばかりで、『へぇ』という感嘆語の多かったことか。賢いやつは変わり者が多い典型。

おやじは厳しい茶道の先生らしい。この兄貴も茶道ができる。
有るとき、兄貴が彼女を連れてきて、お茶を建てたらしい。その一部始終をおやじがこそっと隙間から
見ていた。兄貴のお茶の建て方にいてもたってもいられなかったのか、『こら○影わしがやる!』っと言って
披露したらしい。そんなおやじをもつ兄弟達でも有る。


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