エピソード2 伝説の手鍋

  いつの旅行だったかこれまた伊勢へ。場所は石鏡(いじか)、さびれた漁港である。
 新鮮な魚だけが売り物の民宿。ひさしぶり仲間全員が集まった旅行で、いまにして
 思えば、全員が集まるのは最初で最後であった。

 夜の晩飯だけが希望の旅行である。おぉ!いい新鮮な魚介類である。
 鍋もいいにおい。食がどんどん進み、酒もたんまり肝臓をうるおす。
 いい塩梅にみんな酔ってきた。
 酔いにまかせた1人が、”手鍋をごちそうしよう”とつぶやきながら、鍋に手を入れ
 中の魚を手にとりながら、「いい手汁がでてるで」と、乱行におよんだ

 なぜか、彼は手に火傷することもなく、事は済んだが、誰もそのあとの鍋をつつかなかった
 のは、言うまでもない。

 この鍋を伝説の手鍋と呼んでいる、誰もこの味付けはまねできない。

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